私は今までの自分の独善的な生徒との関わり方にひどく自分が嫌になりました。この求人を見つけたのも、大学の教授に相談したのも、全て自分がやりたいことをさせてもらえる環境にいてこそ。何の不自由もなく育ってきた私が人を教育することなんてできるのだろうか?自分が涙を知らないのに、人の悲しみを理解することなんて出来るのだろうか。
本当にわからなくなりました。どうしようもなくなって、ふらふらとあてども無く街を歩いていたら意識しないうちに大学へと足が赴いていました。
門をくぐり、現代国語の教授に相談しようと思いました。教授はいつもの通り椅子に座り、私の話を聞いてくれました。話を聴き終わって私にこう教授は言葉をかけました。
「今まで何の不自由もなく生きてきたことに悩んでいることもわかる。それで人を教える仕事をできるのだろうかと悩んでいることも。求人を見つけたのは自分が楽だから、という理由で応募したのもよく分かるよ」
次いで教授はこう言いました
「僕も転職して今の職場についたからよく分かるんだけど、安定を求めて仕事をするのは誰にでもあることだよ。誰も苦労の道を通ろうとはしない。だからこそ仕事を求めるんだけど、君がまず考えるべきは自分が何故教員になったのかや、その経緯を恥じることじゃない。その生徒の悩みを真剣に聞いてあげることだ」
私に彼女の悩みが救えるのだろうかということ。それは君が本気で彼女とぶつかるしかない。最後に教授が言ったことはそういうことでした。