すぐに履歴書を作り、その学習塾へ面接を受けに行きました。面接官は私が目指している現代国語の講師で、私の話す言葉一言一句をよく聞いています。今まで読んできた本、そして自分でその本に対して思うこと、そういったことを面接でアピールしました。もちろん学習面でのアピールですが、それは大学でも結構な成績を残しているのでそちらは別にお話しました。求人を見つけてから面接を受けて3日後、採用通知が届きました。
その学習塾での勤務が始まりました。生徒たちは当然ながら勉強をしたいのでそこにいる。そしてそうである以上あまり授業中に騒ぐこともないというのが私の見立て。そしてその見立ては思いの外当たっており、スムーズに事業が進みます。この職場に就いてよかった。転職を経験した教授にお礼を言わなければと思いました。
しかしある日、職員室に一人の生徒がやってきました。どうしても私と話したいとのこと。どうしたんだろうと思いつつその生徒の話を聞いてみました。するとその内容に私は血の気が引いていきました。
父親が転職に失敗し、体調を崩して病院に入院している。そんな父を見て母は求人を見つけて必死に働いている。私は今は高校生だけど、とても母だけ働かせるわけにはいかない。有名な大学に進学するために今まで頑張ってきたのだけど、もう何か働き口を見つけて学校も辞めるしかないのかもしれない。
それが彼女の話でした。私は衝撃を受け、しばらく何の言葉もかけてあげることができませんでした。彼女があの歳でそのようなことで悩んでいる中、私は行儀よく授業を聞いている生徒たちに教えることによって無難に進んでいく毎日に満足していた。その中に、彼女がいたのです。